神威異伝
「理緒!!」
日向が理緒の方を見た一瞬の隙を狙い、擂雲が斧を振り下ろす。
理緒の方に気をとられていた日向は、後ろに下がりかわそうとした。
だが、完全に避けきる事が出来ず…斧が肩をかすめる。
鮮血が舞う。
「つっ!!」
「よそ見は禁物だぜー?」
そう言いながら擂雲は斧を横に薙ぐ。
傷を負った肩をかばってしまう為、日向は槍で防御をするので精一杯だった。
そんな二人の攻防を横目で見ながら、嘉禄が楽しそうに口を開く。
「今のは呪術の一種で“言霊”と言うんですよ…。どうです?“言霊”で動けなくなった気分は…」
「……最っ低」
睨みながら呟く理緒に、嘉禄は含み笑いを漏らす。
あぁ、そうだと呟き、嘉禄が自分の掌を見つめる。
そして理緒には理解出来ない、よく分からない呪文のようなものを嘉禄が唱えると…
嘉禄の掌に、黒い何かが現れた。