神威異伝
十夜の左腕には…手首から肘にまで黒い蛇が巻きついたような、黒い痣が出来ていた。
あの時、理緒が見た時にはなかった痣である。
今まで一言も喋らなかった村医者が、口を開く。
「この痣は、切り傷や火傷などとは性質が全く違います。様々な薬草や治療方を試しましたが…効果はありませんでした」
「呪いを解く方法は、この呪いを使える人間が知っておる筈じゃ…」
「……あいつか」
包帯を巻き直した十夜はそう呟き、立ち上がった。
「大爺、俺…ここから出ていくよ」
十夜の言葉に、周りの者は目を見開いた。
だが、賢雄は直ぐに口を開いた。
「十夜…お主ここを出て、どうするつもりだ?」