神威異伝
十夜がばつが悪そうに頬を掻くと、賢雄が声を出して笑った。
「なに、少しでも記憶が残っておるなら直に思い出すじゃろう。旅の途中で思い出すやもしれんな…」
賢雄が顎をさすりながら呟くと、十夜が問いかけてきた。
「話ってこれだけか?」
「うむ…、そうじゃな」
「んじゃ俺、旅に行く準備すっから行くわ」
そう言って立ち上がった十夜に、賢雄が尋ねた。
「十夜、お主…いつこの村から出るつもりじゃ?」
十夜は首だけ振り返り、応えた。
「明日の朝、出来るだけ早めに」