こわれた眼鏡とインテリ眼鏡
出会い
その日の帰り道、早夜子は空を見上げながら歩いていた。
やさしく吹く春の風が草のにおいを運んできてくれる。とてもいい風だった。
いつもならまっすぐ家に帰っているところだが、今日は街を散歩してみることにした。
のどが渇いていたので、早夜子はコンビニで冷たい紅茶を買った。紅茶を飲みながら街を歩いていると、ふと目に留まった建物を見つけた。
「こんなところにお店があったんだ…」
何度か通った事のある通りだったのだが、普段全く気付かなかったのだ。
早夜子はおそるおそる店の前に近づいてみる。そこは少し薄暗かった。正常な視力の人ならかろうじて店の中が見える程度に。当然早夜子には見えない。
「どうしよう…」
と、店に入ろうか躊躇していると、誰かが早夜子に近づいてきた。
「お嬢さん、ウチの店に何か用かしら?」
口調は女言葉だが、明らかに男性の声だった。
早夜子はびっくりしてふりか返る。その拍子に紅茶を少し服にこぼしてしまった。
そこには黒くて細身の、きれいなインテリ眼鏡をかけた男性が立っていた。手には買い出しに行ってきたのか、大きなスーパーの袋を二つ持っている。
「あっ…あっ…あの…っ」
早夜子はあわてて目をそらす。顔は真っ赤になっていた。
「あら…けっこうシャイなのね。かわいい。あたしもこんな時代があったのよねー…懐かしいわ~」
早夜子は何だこの人…と思っていた。もしかしてこの人は…。
「お嬢さん」
「はっ!はいぃ!!」
「そのキレイな制服に、かわいい柄が出来てるわよ…」
おネエ口調な男性は、早夜子の制服のブラウスを指さしてくすりと笑う。
よく見てみると、真っ白な長袖のブラウスの左袖の部分にしみが出来ていた。どうやらふり返った時に出来たのだろう。
「あっ…」
早夜子は慌てて袖を見た。
確かにハート型に近いしみが出来ていた。
「早くしみ抜きをしないと、本当に落ちなくなっちゃうわよ~…」
おネエ口調な男性は心配そうに言う。
やさしく吹く春の風が草のにおいを運んできてくれる。とてもいい風だった。
いつもならまっすぐ家に帰っているところだが、今日は街を散歩してみることにした。
のどが渇いていたので、早夜子はコンビニで冷たい紅茶を買った。紅茶を飲みながら街を歩いていると、ふと目に留まった建物を見つけた。
「こんなところにお店があったんだ…」
何度か通った事のある通りだったのだが、普段全く気付かなかったのだ。
早夜子はおそるおそる店の前に近づいてみる。そこは少し薄暗かった。正常な視力の人ならかろうじて店の中が見える程度に。当然早夜子には見えない。
「どうしよう…」
と、店に入ろうか躊躇していると、誰かが早夜子に近づいてきた。
「お嬢さん、ウチの店に何か用かしら?」
口調は女言葉だが、明らかに男性の声だった。
早夜子はびっくりしてふりか返る。その拍子に紅茶を少し服にこぼしてしまった。
そこには黒くて細身の、きれいなインテリ眼鏡をかけた男性が立っていた。手には買い出しに行ってきたのか、大きなスーパーの袋を二つ持っている。
「あっ…あっ…あの…っ」
早夜子はあわてて目をそらす。顔は真っ赤になっていた。
「あら…けっこうシャイなのね。かわいい。あたしもこんな時代があったのよねー…懐かしいわ~」
早夜子は何だこの人…と思っていた。もしかしてこの人は…。
「お嬢さん」
「はっ!はいぃ!!」
「そのキレイな制服に、かわいい柄が出来てるわよ…」
おネエ口調な男性は、早夜子の制服のブラウスを指さしてくすりと笑う。
よく見てみると、真っ白な長袖のブラウスの左袖の部分にしみが出来ていた。どうやらふり返った時に出来たのだろう。
「あっ…」
早夜子は慌てて袖を見た。
確かにハート型に近いしみが出来ていた。
「早くしみ抜きをしないと、本当に落ちなくなっちゃうわよ~…」
おネエ口調な男性は心配そうに言う。