こわれた眼鏡とインテリ眼鏡
外はいつの間にかオレンジ色に染まっていた。

「さ、乗って。」

おネエ口調な男性は車のドアを開ける。真っ黒な普通車だった。
夕焼けの光が反射してオレンジがかっていた。

「お願いします。」

早夜子は助手席に乗り込んだ。

車が動きだし、街の大きな通りに出た。

「あ、そういえば名前を聞いてなかったわね。あたしは大橋 貴之。『貴之』って気軽に呼んで。あなたは?」

「わっ…私は…小林 早夜子です…。」

「早夜子ちゃんね、よろしく。あなた何だか気に入ったわ。なんかこう…心の奧にまだ引き出されていない魅力があるっていうか…。」

「えっ…そんな…」

早夜子は少し頬を赤らめる。

「ほんとよ…あっそうだ!早夜子ちゃん今度店にブラウス取りに来るでしょ?もし良かったら、その時にあなたにピッタリ合う眼鏡、選んであげる。」

「え…」

「だって…その眼鏡、レンズが傷だらけでもう度が合ってないでしょ?それにフレームもボロボロだし…。」

「でも…まだお小遣いが貯まってないんです…」

「お金のことは心配無用よ。代金はあたしが決めてるからね。ウチの店の眼鏡はね、その都度、その場で値段を決めてるのよ。」

「でも…そんな…。そこまでお世話になると私…」

「わかった。早夜子ちゃんがそこまで言うならそれなりの値段をつけさせてもらうわね。それならいいでしょ?」

「はい…でも今はお金が…」

「そんな暗い顔しないの。可愛いお顔が台無しよ、お金なら貯まるまで待ってあげるから。」

貴之はにこりと笑った。
その横顔が夕日のやわらかい光に照らされていた。

よく見ると、なかなか顔立ちが整っていてきれいだな、と早夜子は思った。
早夜子もそれなりに年頃の女子高生らしいことを考えるのだ。

しかし、彼氏にするにはあまりに年が離れすぎていたのだけど。

そんなことを思いながら貴之の横顔をじっと見つめていたら、とうとう気付かれてしまった。

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