こわれた眼鏡とインテリ眼鏡
「…早夜子ちゃん、あたしの顔をじっと見てたけど…顔に何かついてる?」

「…あっ!ななな何でもないですっ…。」

早夜子はぱっと目をそらす。

「ふふっ、それともあたしがそんなに男前だったかしら?」
貴之が冗談っぽく言う。

「………なんでそれがわかったんですか……」

冗談を真に受けてしまった。

「あら~嬉しい!あたし早夜子ちゃんの事もっと気に入ったわ~。冗談で言ったつもりなのに…ねぇねぇ、あたしってそんなに男前??」

貴之は相当嬉しかったらしい。

すると早夜子は横目で貴之を見ながら、

「今のはやっぱり取り消しにしようかな…」

と、少し意地悪っぽく貴之に言い放った。

「まぁ!早夜子ちゃんのいじわる!!」

貴之は子供のようにコロッと表情を曇らせた。

少しの間を開けて、二人はお互いに笑いあった。

初対面で会った人なのに、こんなにも打ち解けられる人は初めてだった。
ちょっと口調がおネエで、少し変わった人だけれども。

もしかするとあのピントの合わない世界から抜け出すきっかけがつかめるかも…そんな希望さえ少しだけ持つことができた。


「…ここで良かったかしら?」

「はい。今日は本当にありがとうございました。また改めて行きますね、お店。」

「ええ、いつでもいらっしゃい。楽しみに待ってるわ。」

貴之はにっこりと笑った。
早夜子も同じように笑った。


早夜子は貴之の車が見えなくなるまで見送った。
そしてブカブカのカッターシャツ姿で家の中へ入った。
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