恋心《短編集》
「コウ…ごめんね…ありがと…」


私は浩一の前に回した腕に、キュッと力を入れた。



「乃亜…あまり心配かけるなよ」


「うん」


「それから…」



浩一は一旦立ち止まると、前を向いたまま言った。



「それから…俺の前では我慢しないで泣いていいから」



「…う…うん」



ほら。

ほらね。


浩一は世界で1番私のことをわかってくれている。



「うぅ…ヒック…」


浩一の言葉を聞いたとたん、臨界状態に達した涙が溢れてきた。
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