ぐるぐるグラリ

片ヮ思い

言葉は無情で
時は非情で。

共に手には取れず、はかなき思いは醜くも美しくも指紋に食い込み、皮膚となる。

せめて腐乱死体の醜い腐臭をありありと残してくれ。
ならばブドワールの如く甘い臭いをみずみずしいまま残してくれ。

時は無情で
言葉も非情。

くすみ、かげり、薄れていく。


燃え尽きた香の灰は時を重ねる毎にハラハラと零れる。

零れた灰を集めては時が止まり、灰を集めても時が動けば香は薄れる。


あの腐乱死体の立ち上る匂い、ブドワールの立ち込める臭い。

思い出すにも時が邪魔をし言葉が霧のように阻む。

掌を嗅いでも舐めても凝視しても、いなたい香りが鼻孔をくすぐるばかり。

時を生きろ
言葉を紡げ

そんなことは言えない。

ただ、燃え尽きた灰に幸せも不幸も無いとだけ、言い聞かせよう。


キミヨサチアラン
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