10年目の告白~愛バージョン
1年目
「私のこと。ちゃんと覚えててね」

私は涙をぬぐい、
ひと呼吸してから彼の上に股がった。

薄暗い部屋は
二人の思いのつまった
今日という1日の締めくくりにしては
いささか古びた作りだったが、私には場所など全く関係なかった。
純粋に彼と、
私との時間を
もう少し延ばしてもいいんだ、という
素直でいられた頃の
少女時代の様な感激が
沸き上がった不思議さに心地よさを覚えたし、

わずらわしさの纏(まとい)が少しでも消え失せる
彼との秘かな夜が

叶えられることに
今だけは自惚れようと思った。
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