10年目の告白~愛バージョン
だが、
少しだけ早く始まったデートは

格別な1日をもたらしてくれたからそれでいい。

私たちは、
少なからず私は
気持ちの中で少し、はしゃいでいたかもしれない。

二人だけの時間。

世の中は
いつも通りの時間が流れて行き
誰も私たちが密会デートをしているとは気付かないはずだ。

これから数時間。
彼は私だけのもの。

私も。
彼だけのもので居られる。
現実から逃避して
私は素直な感情ですべてを楽しもうと

一瞬一瞬を心に刻もうと思った。



念願のシーサイドラインは定刻に発車し始めた。

「使い捨てカメラ買おうぜ。タイムカプセルに入れて、何年か後、また二人で見てみたいな」

発車して間もない車中で
彼は、少年の様な眼差しで
私をチラリと見ては
窓の外の景色を自分の目に焼き付ける様に
視線を移した。

少年みたい。
いや、違うかな。
彼はもともと素直なんだな。
私が曇りメガネで彼を
見ていたんだろうな。
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