恋愛スキル


足音が聞こえ、誰かが入って来たのがわかった。


この部屋は、ナースステーションが硝子越しになっていて、一番管理が届く場所。

だから同室の人は、みんなお年寄りの方ばかりで、お見舞いにきている家族を見た事がなかった。


お隣の寝たきりのお爺さんを見ながら、『いつかお孫さんが来るといいな……』と、本気で祈ったりした。



その足音は少しずつ近付いて来て……


私のベッドの前で止まると、そっと仕切りのカーテンが開いた。



「松浦!?起きていたのか?」


消灯時間間近で、静まり返る院内。


先生はかわらない優しい笑顔を私に向ける。




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