恋愛スキル


「今回は特別だって」

面会時間はとっくに過ぎている。

浅利先生はイタズラっ子のようにニッと笑うと、隣りの椅子にゆっくりと腰掛けた。


「先生忙しかったでしょ?」


私が申し訳なく呟くと、

「俺の事は気にすんな。俺が逢いたいから来たんだから」


先生は優しく微笑むと、温かいその大きな手を、私の頭にそっと乗せた。


「元気そうで安心したよ。胸は苦しくないか?」


「うん……大丈夫みたいです」


「松浦は無理ばっかするからなぁー。なんか俺の方が落ち着かない」


先生はいつもと変わらない感じで、サラッと言うけど……

結構ドキッとするような事を言ってるって、本人は気付いていないのかな?




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