恋愛スキル
守りたいもの-大輔
「なぁ!おい、待てって!」
中庭で、やっと緋乃を捕まえた。
「お前……本当に病人かよ……?足早すぎだし……」
掴んだ腕が震えていて、緋乃は俯いたまま俺を見ようともしない。必死に声を殺して泣く背中が、まるで仔犬のように小さく儚く映った。
まるで、放っておいたら消えてしまいそうな……。
「ごめん……今……一人になりたい……」
「それ、誰に言ってる?」
「大輔……お願いだから一人に―――」
バサッ
耐えられなかった。
俺は腕をグッと引き寄せると、両手で震える身体を抱き締めた。
「無理だろ、こんな状態の緋乃を、見ないふりするとか。俺に出来る訳ないじゃん。
病気だって、まだ安心出来ねぇし、浅利のせいで……そんなんじゃ緋乃また……」
「……大輔は知ってたんだ?先生と春瀬先生の事……」
一瞬、鼓動が止まった気がした。
「……もし、そうだとしたら?」