恋愛スキル
理想の子供-緋乃
終始無言で歩いた私達。
大輔は、時折後ろの私を気にしては、速度を落として歩いてくれた。
こんな時でも気遣ってくれる大輔は、本当に優しい…。
沈黙の中、私達のマンションが見えてくる。
良くある普通のレンガ造りのマンションで、うちは一階の105号室。大輔はお隣の104号室だ。
「今日は有難う。またな」
大輔はマンションに着くと右手を軽く挙げた。
「うん…またね」
私がそう言って、ドアに歩み寄ると、大輔もドアを開け家に入って行った。
私も鍵をあけ、ドアノブを捻る。
この扉を開ける瞬間。いつもっと身体が重くなる気がした。
まるで、呪文を唱えなければ開かない扉のように、私はいつものように小さな声で口ずさむ。
“頑張れ私”と―――