木蓮の涙
「現世でこそ吉祥天お前の
 願いを必ずこの夜叉が
 叶えてやろう

 願いは一つお前の幸せのみ
 あの頃の微笑をもう一度お前に

 この夜叉の『命』お前に奉げよう」


「でも・・・」


春蘭は迷っていた夜叉の言葉を
信じていいのか

自分には吉祥天としての記憶はない

それでも吉祥天を思い出すように
話すその声は

優しさに満ちていた
叶わない思いを抱く

二人の気持ちは同じもの


「貴方が鬼に
 なると言うなら私も
 その覚悟がいるわ・・・」

春蘭はまだ自分の心を
決めれずにいた

私は愛する人一人のために

『鬼』になれるのか

今まで大切にしてきた者全てを
裏切り切捨て自分の為だけに迷わず
突き進めるほど冷酷になれるだろうか











 
 






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