木蓮の涙
「な・・・なんだこれは・・」
映画のフィルムのような
断片的な映像が目の前を通り過ぎていく
湖の畔で楽しそうに笑いあう男女
2人を遠くから見つめる女
当主と呼ばれる男
場面はどんどん切り替わっていく
泣き崩れる女を慰める男
パラパラパパラ
次の場面を見たとき燈夜は青ざめた
逃げ惑う人々・・・・鬼と化した者が
荒れ狂う姿・・・ドックン
ドックン
ドックン
高鳴る鼓動・・・・ドックン
男の腕の中で横たわる女・・・ドックン
止めてくれ・・こんなもの見たくない
なぜ俺に見せるんだ・・・
抱きしめようとした女の体が
砂のようにサラサラと崩れ落ちた
かき集めようとしても指の隙間から
こぼれ落ちてしまう・・・どうして・・・
なぜ『俺』は誰も救えなかった
誰一人として助ける事が出来なかったんだ
――――俺?これは俺の記憶なのか?
毘沙門天と呼ばれる男は俺…なの…か?