木蓮の涙

「な・・・なんだこれは・・」

映画のフィルムのような
断片的な映像が目の前を通り過ぎていく


湖の畔で楽しそうに笑いあう男女

2人を遠くから見つめる女

当主と呼ばれる男

場面はどんどん切り替わっていく


泣き崩れる女を慰める男


パラパラパパラ


次の場面を見たとき燈夜は青ざめた


逃げ惑う人々・・・・鬼と化した者が

荒れ狂う姿・・・ドックン

ドックン

ドックン

高鳴る鼓動・・・・ドックン


男の腕の中で横たわる女・・・ドックン


止めてくれ・・こんなもの見たくない

なぜ俺に見せるんだ・・・


抱きしめようとした女の体が

砂のようにサラサラと崩れ落ちた

かき集めようとしても指の隙間から

こぼれ落ちてしまう・・・どうして・・・


なぜ『俺』は誰も救えなかった
誰一人として助ける事が出来なかったんだ



――――俺?これは俺の記憶なのか?

毘沙門天と呼ばれる男は俺…なの…か?










< 45 / 50 >

この作品をシェア

pagetop