木蓮の涙
「バサッバサッバサ―」
大きな鳥の羽音に驚き目を覚ました
「はあ、はあ、はあっ…
これはいったい…なんだ」
自分の頬に伝う暖かいものに
気付き手を当て確かめる
「な…涙・・・」
ボタボタとこぼれ落ちる涙が
誰の物なのか分からない
確かに俺の頬を伝っているのに
俺じゃない・・・・
泣いているのは俺なのか?
『俺は誰だ』
「燈夜様?また此処にいらしたのですか?
全く貴方こそ芸がない
逃げるならいっそ見付からない
場所に行けばよいものを」
「藤…」
自分が良く知る者の声にホッとした
「ど・・どうしたのですか・・」
青ざめた顔で涙を流す
燈夜の顔に藤は驚きを隠せずにいた
「藤、俺は誰だ…」