木蓮の涙
「何を言ってるのですか?
 ―――燈夜様・・・・
 しっかりして下さい
 いったい何があったのです・・・」


――――――――


こんなに動揺する燈夜を藤は初めてみた


幼い頃から当主としての教育を受け
同世代の子供よりはるかに大人びていた

常に周りから一目置かれる存在で
あり続ける為にあらゆるものからの
重圧に絶えてきた

15歳になった今では燈夜様の
右に出るものはいない
どんな場でも毅然とした態度を崩さない
そんな燈夜様が涙を流しているなんて・・・




「藤、俺は誰だ」

燈夜は声を荒げた




余りの気迫に藤は跪き頭を垂れた


「天竜一族次期当主、天竜 燈夜様です」


「そうだ俺は天竜一族の当主になる男
 なのになぜ・・・・なんて俺は無力なんだ

 ―――――――ワァァァァァ・・・・」

燈夜は地面を握り締め声を上げ泣き叫んだ


「ワァァァアアアアアア―」


「落ち着いて下さい燈夜様」

藤はありったけの力を込めて燈夜を抱きしめた



 






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