木蓮の涙
湖の畔にボーっと立っていた



両親の事を思うと胸が痛む


私のせいで悲しみにくれる
毎日を過ごさせてしまう


「自分の事ばかり考え
 てごめんなさい
 
 どうか私のために
 泣きながら毎日を
 過ごす事がありませんように」

願いはただそれ一つだけ


ゆっくりと

湖の中心に向かって歩き出した瞬間

フワァ~っと

暖かい風が吹き抜けた

「木蓮の香り・・・」

周りを見渡すと湖を囲むように
木蓮が咲き誇っていた

どうしてすぐに気づかなかったのか

「こんなにたくさん
 咲いているのに・・・」

こんなに美しい物にさえ
目を向けれなかった

私には美しい物を

美しいと素直に感じられる

心はもうどこにもない










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