木蓮の涙
「あなた誰?」

そこにはこの世のものとは
思えないほど美しい青年が
立っていた



「我は龍の化身
 この湖の主ぞ
 
 幼き頃の約束が
 果たされる時がついにきた」


「約束って?」


「覚えていなくとも
 仕方あるまい

 気が遠くなるほど
 遥か昔の話ぞ」

なんでそんな優しい目で
私を見つめるの

何?この感情は


どこからくるの切なさが
込み上げてくる


「もう一度選ぶがよい

 我と遙かなる時を
 永遠に生きるのか

 はたまた
 光も届かぬ暗い闇の中で
 もがき彷徨うのか

 どちらを選んでも
 そなたの道

 ―――さぁ
 選ぶかよい」






 





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