imitation love
ドアを開けた。


「あぁ。ごめん。」


「いいよ。部屋汚いのにごめんね。」



やっぱり、この空間は独特と感じた。



「あのさ、純。俺達もう一度やり直さないか?」



唐突に、サラリとも言われた千里からの言葉。当然びっくりだ。そしてあの時と同じ言葉を繰り返した。



「あのね千里。あたいはとりあえずUSUALLを頑張っていくつもり。それは分かってくれないと。」



あたしの声は振るえていた。



「けれど、純が居ない日考えられないぐらいに別れてから初めて好きだったなぁって思ったんだよ!ずっと俺の中の時間はあの夜で止まっているんだよ。」



「そこまでしてやり直したいの?」



あたいはキレ始めていた。次の瞬間千里に腕を掴まれていた。



「知ってんだよ。お前、俺と結婚するつもりだったんけど事務所の社長に無理矢理引き剥がされた事。俺だってかなしかったよ。大切なもの奪われたから」



瞬間に涙が出た。普段はこんな女々しくはない。ライブですらも泣く事はないのに。


「千里の馬鹿。カッコイイところを全部持っていく。」


ちょっと鼻声になりながらも玄関のドアをぼんやりと見つめていた。




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