imitation love
兄弟と二人の「博」
久しぶりに会った。だから過去の事を忘れて欲しかった。


今はお店で働いている身なんだから。目の前には兄弟とかつての親友。そして・・・・。


「お前が家を出てから大変だったんだよ?ま、無事で何よりだけどな。」



一番のよき理解者泰司兄。一つしか歳がちがうせいか、結構仲良しで喧嘩もよくする。



「俺もそれ思った。それにやっぱ博兄すげーなって思った。」



末っ子の由樹が関心したように言った。



「でも・・・・ゲイにおそわれてから変わったの。この仕事始めた時もそう。全部刺青はその時に自分が犯した罪をやらないように背中に入っているの。」



既に泣きそうだったのを覚えている。俺の声は震えていた。



「俺だってゲイを止められるなら止めたかったよ。けど、あの頃の俺は力がなかったから・・・・」



久しぶりに親友、そして同じ名前の博の涙を見た。彼は今、モデルHIROとして数多くの雑誌に出ている。もっぱらファション誌だけのモデルだが。



もう一人の博は喋らない。それもそうだろう。何故なら彼はゲイの事件の犯人でもあるのだから。

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