星泥棒は罪にならない
「いいから選べよ。好きな星を」

天を指した人差し指はそのままくるっと円を描き、ゆっくり下りると私の前髪を梳く。


彼のTシャツの胸元には私たちが住む日本がプリントされていることに、気がついた。

ゆっくりと空を見上げる。

真っ暗な夜空に光る豆電球みたいな星が浮かぶ。



私は目を細め、腕を伸ばした。青白く輝く星を指差し、「あれが欲しい」と子供みたいな幼稚な言い方で。

「誕生日プレゼント、あれが欲しい」と繰り返し言い、伸ばした腕をそのまま彼の首に巻きつけた。

オホーツク海から布越しに彼の肌へ吐息をかける。

あぁ、なんだか地球を抱きしめている気分。


「わかった」

と一言だけ彼は言い。



今度こそキスを。
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