星泥棒は罪にならない
私は何もためらわずに彼の手に自分の手を重ねる。



その瞬間、強い引力のような力で、あっと言う暇もなく彼の腕に閉じ込められてしまった。

鼻をかすめるブルガリブラック。
香水を一度も変えない彼はずっとこのブルガリを愛用している。

どうやら、私の鼻は彼以外のブルガリを受け付けないらしく、彼以外のブルガリを不快に 感じてしまうほどだ。

それくらいに、やられている。


久しぶりに近くで見る彼は昔と全く変わっていない。
相変わらず、子犬みたいな目をして、大人になりきれない少年みたい。
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