薔薇の欠片
「憂さん?」
玲さんに名前を呼ばれるまで気づかなかった。
私、今泣きそうだった。
彼が、手のひらでそっと私の頬を触る。
彼の手は驚くほど冷たくて、
だけど、その手に触れられたところがとても熱くなって。
「お願いですから、泣かないで」
……どうして、そんな風に私を簡単に見透かすことができるのだろう?
彼はそっと私を抱きしめた。
それをきっかけに、
私の涙腺は壊れてしまったようだ。
「ごめんなさい……」
彼は何も言わず、私を抱きしめる。
そうされると、よけいに胸の痛みが増していく。
「私……」
静かに涙が零れ落ちていく。
涙と一緒に、言葉が小さくこぼれていく。
「どうして……」
すると、玲さんは私を少し離して私の目を見る。
私は吸い込まれるように、彼の瞳を見た。