薔薇の欠片
「いつもなら、1週間ぐらいで息の根を止めるのに」
一言、一言に棘がある。
いつものことだから、
あえてあまり相手にはしない。
「……調子が悪いだけだ」
僕はそうぶっきら棒に答える。
「本当、人間の女の前以外では無表情よね」
「何が言いたい?」
「人間の女にも、今の玲を見せたいものだわ」
表情の無い僕に女が寄ってくるわけが無いだろう。
作り笑顔ひとつで簡単に寄ってくるのなら、何度だって笑ってみせる。
それくらい、嫌でもできる。
海は立ち上がって、ドアを開けて背を向けたまま止まる。
「……本気じゃないでしょうね?」
胸がざわついた。
「まさか」
「あの子みたいになるわよ」