薔薇の欠片
いつの間にか辺りは闇がかかり始めていて、
街の電灯には橙に近い淡い光が灯りはじめていた。
私がそのとき見た彼の瞳は、
混じり気のない銀色だった。
「僕は……」
彼がそう言うのと同時に私は必死で泣き止もうとした。
彼の顔が、涙でにじんでしまわないように。
「どうすれば、
貴方を泣き止ませることができますか?」
涙の代わりにでてきたのは、
ありえないくらいの幸福感。
私は彼の胸に顔をうずめて、ささやいた。
「そばに、いてください……」
「……その役目は、僕でいいんですか?」