薔薇の欠片
僕は窓の枠に手を掛けた。
「どうして」
彼女は顔をふと上げる。
彼女の瞳が僕を捕らえて放さない。
「どうして、
そんな今にも消えてしまいそうな声で呼ぶんですか」
彼女は今にも泣きそうな顔で僕に抱きつく。
体温が、熱かった。
とても冷たい僕の体温は
彼女の体温に、かすかに温められる。
「お願い、連れ出して」
彼女の腕の強さが増す。
このまま彼女を連れ出せば、
思い通りに事が進む。
彼女は僕に殺されることも知らず、
全てを捨てるのか。
……僕は、彼女を
殺すのか。
その時だった。
今までに浴びたことの無いくらい
強い光を浴びせられた。