薔薇の欠片
来ると思ったよ。
そんなに簡単に彼女を連れ出せるわけが無いとわかっていたから。
だけど、
残念だったな。
吸血鬼が光を嫌うのは、日光のみだ。
人間が作り出した光なんて、
痛くも痒くもない。
僕らは光の発信源を見た。
彼女は怯えた声で呟く。
「高藤さん……?」
やはり、彼女と婚約する男か。
彼は僕を憎しみを込めて睨んでいる。
「もしかしたらと思ったんだ。
もっと早くから君を止めておくべきだった!」
僕はその男の背後に幾人かいる兵を見つめた。
兵の一人が銃を構えるところを見た。
彼女も気づいたらしい。
「やめて!」
銃弾は、
僕の体を貫いた。