薔薇の欠片
「あの子に似ているわ」
僕は目を見開く。
「何を言うんだ」
海は僕を見て、意外だというような顔で言う。
「……はじめて見た。玲が素で驚いているところ」
僕ははっとして、すぐに表情を戻した。
不覚だ。
どうしてこんなに彼女のことで心が乱される?
「まあ、いいわ。また来るから」
そう言い残して、海は去っていった。
僕は憂の寝顔を見つめた。
幸せそう?
アイツに似ている?
まさか。
僕は洋館に入り、寝室にあるベッドに彼女を寝かせる。
彼女は今、どんな夢を見ているのだろう。
僕が彼女の夢の中に入れるのなら、
すぐさまに牙を剥くのに。
そして夢から覚めたとき、僕を拒絶すればいいんだ。
……いや、何を考えている。
そんなことだったら、
彼女を楽に殺せない。