薔薇の欠片
そうだ。
どうして彼女を選んだんだ?
彼女を選ばなければ、
こんな思いをせずにすんだのに。
“簡単に堕とせる”?
それなら、
もっと他にもいるだろう?
“お嬢様だから”?
それなら、
他の街にもいる。
何故?
何を思ったのかはわからない。
だけど、
僕は無意識のうちに立ち上がって話し始める。
「どうして吸血鬼は日の光に当たれないと思いますか?」
僕はいきなり何を言うんだ。
彼女もきっと驚いている。
しばらく経っても返事が返ってこないので名前を呼んでみる。
「憂さん?」
「えっ、あ、はい」
「聞いてました?」
「はい」
今の口振りを聞いている限り、興味が無いか、想像ができないってところだろう。
「えっと…、わかりません……」