薔薇の欠片


「吸血鬼には、体温がないんです」



それ以上、言ってしまっては駄目だ。



「例えば、日光にアイスを当ててたらどうなると思います?」


「溶けますね」



彼女は言った。


止まれ、


止まるんだ。



「それと同じです」



僕は振り返って笑顔を作っていた。



「日の光になんかあたったら、溶けてしまう。

 昔、いたんですよ。日の光に当たった奴が……」



やめろ。



「彼は、自ら日の光に当たりにいったんです……」



何故、彼女に言うんだ?


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