薔薇の欠片
君の欲情に答えてあげる
僕は夜になるのを待った。
彼女はベッドの上でうとうととしていたが、僕は意識がハッキリしていくことを感じた。
そして、ちょうど月が出てきた頃に僕は彼女に言った。
「夜こそが、僕の住む世界です」
彼女は僕に視線を向ける。
「夜の世界を見ませんか?」
優しく、誘うように言った僕を彼女は寂しく笑って頷いた。
「はい」
僕は「よかった」と言うと、彼女を持ち上げて外に出ると宙に浮いた。
僕は、あの場所へ行く。
“太陽”を失った、あの場所へ。
森の奥へ来ると、僕は彼女を降ろした。
僕はそのまま進もうとすると、
彼女は呟いた。
「恐い……」