薔薇の欠片
そう言う彼女の顔を僕はそっと手で包んだ。
「大丈夫」
そう言って僕は彼女の額にキスをした。
「恐いものの後に待っているのは、美しい世界です」
内心、僕は驚いた。
軽蔑はしていないだろうと思っていたのに。
……やはり、
僕と彼女は決定的に違う。
僕は後ろからついてくる彼女を気にしながら前へ進んだ。
「もうすぐだ」
僕がそう言うと、彼女は僕に飛びついた。
何だ、と思い僕は振り返る。
「憂さん……?」
「恐い……」
彼女は小さく、小さく呟く。
僕は体ごと彼女のほうへ振り返って、言う。
「大丈夫
僕が守りますから」
その瞬間だった。