薔薇の欠片
頭痛にも似た感覚が僕の頭を侵し、
めまいがした。
ああ、これは……
「ごめんなさい。
少しわがまま言いました」
僕の状況をわかっていない彼女は少し嬉しそうに言った。
……とうとう、きてしまった。
これは……
禁断症状だ。
僕は頭痛が酷くなるのを堪えながら前へ進んだ。
そして、とうとう着いてしまった。
急に止まった僕の背中に彼女がこつん、とぶつかる。
「すいませ……」
「ここです」
僕は彼女の後ろにまわり、優しく両肩を包んだ。
「綺麗……」
彼女はその景色に見惚れていた。
それも、そのはずだ。
透明よりも透明な水が流れる湖。
その湖に反射する月光。
夜にだけしか、見られない光景。
そして、彼女は呟く。
「この風景を……
朝見ても、素敵なのかしら」