薔薇の欠片
……似たようなことを、アイツも言った。
『俺、彼女とここの景色を見てみたい。
もちろん、日が当たるところで』
僕は言う。
「この場所は、特別です。
全てが悪に染まるはずの夜が、
ここだけは優しく見える」
そして、急におかしく思えてしまった。
彼女は急にくすくすと笑い始める僕を不思議そうに見ていた。
「……バカだな
本当……あいつは……」
瞳に何かが溜まっていくのがわかった。
何故?
こんな気持ちになる?
「アイツ以上に、気の合う奴なんていなかったのに
弟みたいだったのに……」
彼女は僕の名前を言いかけて止まった。
「ここで、アイツは日の光に当たりに行ったんですよ」
今でも思い出す。
アイツが光の中にとけていく光景を。
「吸血鬼は、普通人間を嫌うんです」
そう、そのはずだった。