薔薇の欠片
「日の光を独り占めにする人間が憎い。
自分を吸血鬼にした神が憎い」
彼女は後ろにいた僕の方へ振り返った。
また、頭痛がする。
それ以上、近づくな。
「そんな奴らばかりなのに彼だけは違った。
人間を愛してしまった」
彼女は何も言わず、ただ僕をじっと見る。
頭痛が激しくなっていく。
体中が叫んでいる。
「彼は人間と同じ場所へ行きたいと言っていた。
そして、人間を照らす日の光を見てみたい、とも言った。
僕はやめろと言った。
だけど、彼は聞かなかった。
それどころか、その人間は彼をさらに追い詰めた。
『本当に私のことがすきなの?』と。
そして、彼は日の光に当たりに行った」
憎い。
憎い、憎い。
その人間が憎い。
人間が憎い。
頭痛はだんだんと、
僕の体を支配していく。
言い終えた僕に彼女が言う。
「どうして、彼は日の光に当たる必要があったんですか?」