薔薇の欠片


それは……



『光に……』



「すいません。
 今はまだ言えません」



僕は彼女に言う。


彼女はそれでも拗ねないで、
優しく笑っていた。


頭痛は、命令に変わっていた。



「貴方に、どうしてもここを見て欲しかった」



彼女ははい、と頷いて



「私もここを見れて良かったです」



と微笑む。


命令が、強くなる。



「もしも僕が人間だったら、どうなっていたんでしょう?」


「え……?」


「貴方に出会えていたでしょうか?」



彼女はわかりません、と答えた。


だけど、と続けて



「貴方に出会えてよかった」



と笑う。


駄目だ。

命令が最高潮に達する。


僕は笑っていた。



「そうですね」



だけど、限界だった。


僕は彼女を地面に押し倒していた。


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