薔薇の欠片
はやく逃げろ、と言う気持ちと裏腹に彼女の手首を掴む力が強まる。
「どうしたんですか……?」
驚きを隠せない彼女は言う。
僕は、そんな彼女の言葉も無視してだけど、と続ける。
「結局、こうなる運命だったんだ」
僕を見つめる彼女の視線は
澄んでいて、なにもかも見透かされていそうで
せめて、僕の手を払って。
そうして、
酷いことを言ってくれたらいいんだ。
それならば、
こんな思いもせずにすむ。
「ねえ」
彼女は冷静だった。