薔薇の欠片
「僕のこと、好き?」
命令は、本能となる。
どうか、
答えないで。
もう本当に引き返せなくなる。
それでも僕を見る彼女は
優しく、気高かった。
「ええ、好きよ」
聞きたくなかった。
僕はすぐにでも逃げ出したかった。
なのに、
表面上の僕は穏やかに微笑んでいる。
彼女の唇にキスを落として、
微笑んでいる僕がいる。
「じゃあ、さ」
言うな。
それ以上、言ってしまっては駄目だ。
駄目なのに。