薔薇の欠片
私は声が聞こえてきた目の前の樹に視線をうつす。
樹の葉から玲さんが顔をのぞかせる。
「危ないですよ!」
私は目を丸くして叫んだ。
そんな玲さんは、どうってことないと言う顔で笑っていった。
「大丈夫ですよ、こうみえても身軽なんです」
そうなんですか? と聞き返すと、
彼ははい、と頷いた。
「それよりも、何故こんな時間に、こんな場所に?」
私は首をかしげて訊ねる。
「会いたかったから、来ました」
彼のストレートすぎる言葉に顔が赤くなる。
彼はなんの照れもなく言っているのかもしれないが、私はその一言一言で感情を動かされる。
「とりあえず部屋に入ってください、外は冷えます!」
私は無意識のうちに彼の服をひっぱっていた。
彼もいきなりで驚いたのか、
私にひっぱられるままに入った。
彼は驚いた顔で私に訊ねる。
「僕のような部外者を簡単に入れてしまっていいんですか?」