薔薇の欠片
じゃあ、この雫は何だ?
涙以外の何だと言うんだ?
「……お前は、何かに執着したことはないのか?」
「それは“愛”ということかしら」
僕は口をつぐむ。
海は、言う。
「あるわよ。何百年も生きていれば1回くらいあるわ」
「……それで、どうした?」
彼女はため息をつくと、ぽつりと呟いた。
「私の手で太陽を奪ってしまったけれど」
そして、僕に言い放つ。
「貴方は吸血鬼として失格だわ」
僕は頷いた。
そして海に問う。
「なあ」
彼女は僕が言うことをわかっているかのように耳を傾ける。