薔薇の欠片


私は首を思い切りよく縦に振る。



「貴方は部外者ではありません」



彼は私の台詞を聞くと、

くしゃっと笑って私の頭をなでた。



「嬉しいな」



私の頭の上に玲さんの手があることだけで嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになる。


むず痒いけれど幸せだ、と思った。

だけど、幸せはいつまでも続かないことは知ってる。


いつ、家に帰ったのかわからないが

下の階から母の声が聞こえた。



「まだ起きているの、憂?」




私は部屋にかかっている時計を見た。


時計の針はもう、午前2時をさしている。


私は部屋のドアから顔だけを出して、母に返事をする。



「ごめんなさい、もう寝ます」



ドアを閉めて、小さくため息をつく。


今、会えたばかりなのに。



「いろいろ迷惑そうだから、帰りますね」



玲さんは状況を察知したのか、もの悲しそうな顔をして言った。


そうして、すぐに笑顔をつくっていた。



「おやすみなさい」

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