薔薇の欠片
木々が少なくなってきて、
日が差し込んでいるのがわかった。
草木を掻き分けて私はその場所に出た。
あの時見た湖とは、
また違う顔をした湖だった。
所々に咲いている花は朝露が降りていて美しかった。
優しく降り注ぐ朝の日光は全てを包み込んでいた。
私はその景色に心を奪われて周りを見渡しているとき、
人影が見えた。
錯覚かと思った。
夢かと思った。
だけど違う。
胸がぎゅうっと苦しくなって、
愛しさがこみ上げてくる。
瞳に涙が溜まりだす。