薔薇の欠片


日中は百合と疲れるまで話す。


まだ、何も知らない百合が帰るときに「さよなら」を言った。


百合も笑って言った。



「また、明日ね」



胸が苦しかった。




夕食は珍しく両親と一緒に食べた。


久しぶりに家族そろって食べる夕食。

これも最後かもしれない。


そう考えると寂しくなる

だけど、恐くない。



「ごちそうさまでした」



私は席を立って自分の部屋へ向かおうとした。


とにかく、早く自分の部屋へ行きたかった。


そのとき、母に呼び止められた。



「憂」



私は母に向かって振り返る。



「どうしました?」



母は少し黙って何かを考えるそぶりを見せたが、首を振った。



「ううん、なんでもないの。ただ……」



少し間をおいて母は言う。



「貴方が少し遠いところに行ってしまう気がしたから」


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