薔薇の欠片
優しい声が聞こえた。
私は顔を上げて、声の主を見る。
「どうして、
そんな今にも消えてしまいそうな声で呼ぶんですか」
彼は、人間じゃなかった。
黒いマントをつけて、服は黒と銀に包まれていた。
髪も瞳も銀色で、時々見える歯は牙だった。
それでも、彼は彼だった。
ずっと待ってた。
檻の中から私を連れ出してくれる。
それは、吸血鬼。
だけど、
それでも彼を思う気持ちは変わらない。
私は玲さんに抱きついた。
「お願い、連れ出して」
その瞬間、私と玲さんを光が包み込んだ。