薔薇の欠片
マントが破れて、その布きれが辺りに舞う。
時が止まったように感じた。
私は顔を伏せるしかなかった。
「……僕を誰だと思ってるんだい?」
氷のように冷たい彼の声を聞いて、私は顔を上げた。
彼の胸を見ると、
銃弾によって開けられたはずの穴がだんだん埋まっていく。
「うそ……」
銃弾の傷が、こんなに簡単に埋まるなんて……
高藤さんはさらに形相を鋭くした。
「やはり吸血鬼……!」
そうしているうちにも、私の背後のドアが開く。
「憂」
私は声の主がわかっていても、振り向かない。
振り向いたら、きっと戻りたくなってしまう。
「もうやめてちょうだい」
こんな風に、
簡単に壊れてしまうものなんだろうか。