薔薇の欠片
彼は何も言わずに立ち上がった。
私に背を向けたまま。
「どうして吸血鬼は日の光に当たれないと思いますか?」
急に話題が変わってしまったことに驚いて
私は目を丸くした。
それくらい、
言いづらい理由がある……ということなのだろうか。
今日みた夢が頭をよぎる。
私は首を横に振って頭に流れ込む映像をかき消す。
「憂さん?」
「えっ、あ、はい」
「聞いてました?」
「はい」
私は玲さんの質問を考える。
そういえば、どうしてなんだろう。
吸血鬼が日の光にあたることができないのは。
外見は人とほとんど同じなのに。
「えっと…、わかりません……」
「……吸血鬼には体温がないんです」