薔薇の欠片
ははっと声を出して笑う彼。
その冷たい指先で私の頬に触れる。
「悲しい? 恐い?
それとも憎いかい?
そういう感情が、僕は大好きだ」
狂っているのかもしれない。
彼が、なんて思わない。
私が、だ。
だって
きっと酷いことを言われている
それなのに
何故だろう。
彼を嫌いになんかなれないのは。
「……僕に出会わなければ、君はもっと幸せな生活をおくることができたのに」
彼は、そっと呟いた。
私はゆっくりと首を横に振る。
そんな私を見て彼は眉を寄せる。
「……?」
「貴方に出会わなかったら、きっとこんな感情しらないままでした」