薔薇の欠片



彼の顔が近づく。


私はそっと目を閉じる。


覚悟はできているけれど、

怖いものは怖い。


殺される、

と思ったそのとき


唇に冷たい感触があった。



そっと、目を開ける。



それと同時に、

私の瞳から、一粒の涙が零れ落ちた。


泣いてはいけないのに、

それを合図にぽろぽろと涙が溢れては零れ落ちていく。



滲む視界の中で、彼の苦しむ顔が見えた。


やめて。

笑って。


そんな顔しないで。


私は貴方が大好きなんだから。


私も笑わなきゃ。


貴方が大好きだから

精一杯、笑って見せなきゃ。



「……やめろ」


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